乳がんの治療乳がんの治療は原則的には外科手術であり、化学療法や放射線療法が併用されることもある。
乳がんの外科手術は
腫瘍のタイプと病期(ステージ)によって、乳腺腫瘤摘出(lumpectomy, しこりのみを摘出)か乳房を大きく切除する必要があるかが分かれる。外科的に完全に乳房を切除する方法は乳房切除術(mastectomy)と呼ばれる。
標準的な術式では、執刀医は手術で腫瘍を確実に切除できるように、腫瘍の周囲の正常組織を含めて組織を切除することで目的を達成する。組織切除に明確な余地が無いと、更なる切除手術が必要になる。場合によっては前部胸壁を覆う大胸筋(pectoralis major muscle)の一部を切除することがある。
判断によっては、腋窩リンパ節も手術の際に切除される。過去においては、癌が広がらないように10〜40個もの広範囲に腋窩リンパ節が切除され、術後合併症として切除した側と同側の腕に、リンバ切除によりリンパ系の広範囲のリンパ節に障害が及ぶことによってリンパ浮腫(lymphedema)の発生が繰り返された。 近年ではセンチネルリンパ節判別法(technique of sentinel lymph node dissection)が普及して、リンパ節の切除は少なくてすむようになり、この術後合併症は減少している。
乳がんの化学・内分泌療法は
化学療法は、主に術前・術後の補助化学療法や進行・再発乳癌の治療に用いる。また乳癌はエストロゲン依存性であることが多いことからエストロゲン依存性の乳癌の場合、抗エストロゲン剤であるタモキシフェン、アロマターゼ阻害剤等を用いる。
乳がんの放射線療法は
放射線療法は、主に転移リンパ節、遠隔転移の治療に用いる。
乳がんの分子標的治療は
病理検査でHER-2陽性の場合、モノクローナル抗体療法も行われる。
今日においては、次に述べる様式が推奨されている。この様式は二年置きに開催される国際会議の、スイスのSt. Gallenで開催された会議で議論され、その議論は世界規模の研究の中心で実際に行われた結果に基づいている。病理区分(年齢、癌の種類、大きさ、転移)で患者を大きく高リスク群と低リスク群とに判別し、その後で施す治療の取扱い基準をそれぞれ違うものを施す。次に要点を示す。
■乳房温存術(乳腺腫瘤摘出術, 乳房の四分の一切除)の場合に生じる、高い局所再発リスク(〜40%に発生)は胸部の放射線療法で減少する。
■リンパ節に浸潤していた場合に生じる、高い癌死亡リスク(30〜80%)は全身療法(抗ホルモン療法あるいは化学療法)で減少する。
■若い患者において最も有効な全身療法は化学療法である(通常はregimentが選択され、CMF、FAC、ACあるいはtaxolも使用される)。
■壮老年の患者において最も有効な全身療法は抗ホルモン療法(tamoxifenやGnRH-analogues)である。
■化学療法は患者の年齢が65才を越えると増加する。
■エストロゲン受容体を持たない腫瘍の患者の場合最も有効な全身療法は化学療法である。
■エストロゲン受容体を持つ腫瘍の患者の場合最も有効な全身療法はホルモン療法である。
幾つかの種類の腫瘍については全身療法は推奨されない。また、浸潤されたリンパ節が殆ど無い場合は、乳房切除術や放射線療法は推奨されない。進行乳癌には三つの治療様式(外科手術、放射線療法、全身療法)を組み合わせるのが良い結果をもたらす。
長期治療成績は診断確定時の乳がんの病期(ステージ)と癌がどのように治療されたかに依存する。
一般的に言って、早期癌で発見されれば、されるほど予後は良い。
男性乳癌では女性乳癌と比較して大胸筋浸潤を起こしやすく、進行癌で発見される確率が高いため、5年生存率40〜50%と予後は不良である。